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短編小説 晩秋

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春夫は現在、76歳だ。幼い頃からヴァイオリンを習っていた。出身大学は音楽大学だった。音大の2年生の頃、ヴァイオリンを家庭教師で女子高生に教えていた。ところが、その女子高生が、ある日、詐欺師の素顔を見せ、春夫がわいせつ行為をした、被害届を出されたくなかったら、100万円払え、と脅した。美人局でもなく、今から思えば少年少女が持っている悪魔の一面であった。若くお坊ちゃん育ちの春夫は所持していたヴァイオリンの中から三つのヴァイオリンを売却し、やすやすと100万円を少女に渡した。すると、鬱気味になり、一年間、音大を休学し、それまで酒もタバコも興味がなかったのに、休学中に酒、タバコを始めた。音大に復学し、卒業後はある有名な交響楽団のヴァイオリン奏者になり、現在は退職して、年金生活だ。大学生の頃の女子高生のことがトラウマとなったのだろう、女とは縁のない人生であった。結婚したことがなかった。孤独な隠居生活で、毎晩の酒とタバコが喜びであった。楽団時代の同僚の男性には孫がいた。孫はこの間まで女子小学生だったと思ってたのに、女子大生になっていた。春夫は、この元同僚に頻繁に電話して、孫の大学生活を聞いていた。華の女子大生だった、この孫は、卒業し、OLになった。それで春夫も酒、タバコの夢から目覚めたように、呑まず、吸わなくなった。もう、元同僚の男性にも交流はなくなった。天皇家の血筋の、ある友人に以前から誘われていたヴァイオリン教室の講師になることになった。音大の頃にしていたヴァイオリンの先生から、人生の晩秋に人生を始めるのであった。
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